石造龕
石造龕(せきぞうがん)
長野県宝・石造文化財
昭和50年7月21日指定
法隆寺の玉虫の厨子に似た形の貴重な中世の石祠(せきし)です。 高さは117.5㎝、屋根、龕(厨子)、竿、基礎の4部からなっています。屋根は入母屋造りで大棟の左右に鴟尾(しび)も付けられています。龕は上半分が欠損していますが、正面左右には狛犬のような像が見えます。中台正面には勾欄と階段が表されています。竿石には正面に鶴・ 亀と松らしい図が見え、他の3面には木の幹の浮き彫りと、開花・青葉・結実の絵があり ます。
基礎には次頁のような銘文が見られ、その意味は次のようなものと考えられ ます。
「海野・望月の両家が氏神へ戦勝を祈願してこれを造立した。あわせて祢津氏・矢沢氏も米二石を奉献した。正慶2年(1333)3月28日のことである。大宮の神主が祈念申し上げる。」
向かって右側面は年号月日の書き順等からみて、正面側から読むように、あえて普通とは逆に、左から右へと刻んであるようです。大宮社(両羽神社)の神主が、この造立から間もない時期に由来を記したものでしょうか。
この銘文は異例な文体である等のため不審視されてきました。しかし正慶2年というと鎌倉幕府滅亡の年にあたります。古代以来、当地方に栄えた海野・祢津・望月氏等、滋野一族にとっても命運のかかった時期でした。その争乱にあたっての出陣に際して武運を祈ったものであるとすると、歴史的事実とも合います。当地の中世史に関わる貴重な記録でもあると言うべきでしょう。
所有者 両羽神社
所在地 東御市下之城宮屋敷337
文化・スポーツ振興課文化振興係(文化財)
電話:0268-75-2717 | ファクシミリ:0268-63-5431
メール:bunka-sports@city.tomi.nagano.jp
更新日:2023年3月31日